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2021年06月06日

世界ふしぎ発見のMAについて、その6

世界ふしぎ発見のMAについて、その6

 

なんか、すごく間が空いてしまいました。

今回は現場音(同録)の整音について話していこうと思います。

 

30年以上MAミキサーをしていると、その時代時代の機材に、整音の仕方が左右されますね

 

世界ふしぎ発見を担当した当初は、何度もこのブログで登場しますが、主にテープロックシステムで作業をしていました。

スタジオには他に、シナリア(SSL社)という日本で数台しか導入されていないDAWもありましたが、たまに使うといった程度です。

 

どちらにしても、録音されている状態を目で見ることは出来ません。

今のように、波形が見えるわけではないのです。

(シナリアはDAWですが録音された状態が、1本のバーとして表示されるだけでした)

 

オートメーション機能もあるのですが、自分自身オートメーションがないスタジオで育ったので、あまり積極的に使わない作業方法を取ることが多かったです。

今は、バリっバリ使います。オートメーション!トータルリコール!最高です!

 

そのため基本的にミックスの時、一度も止まらず最後まで通す事ができるように整音していきます。

その理由のひとつとして止まることなくミックスできれば、試写として観てもらう事ができるので、時短にもなります。

オートメーションを使わないので、途中からの手直しや後から修正する事が大変なこともありますが、、、。

 

しかし、かといって、全てのカットごとの音質、音量をそろえていては、整音にとてつもない時間がかかってしまいます。

 

なので立ち上げの際、映像をすべて見ることで、今回どういう音質音量の部分が多いのかをまず見極めます。

どういう、整音の方法をとれば効率よく進める事ができるのか、の見極めが今後の作業効率に関係します。

 

その一番多い部分(平均的な音質、音量の箇所)で、EQとコンプレッサーで調整をします。(平均値の選択)

 

で、基本的に「世界ふしぎ発見」の音声さんは、はっきりいってかなりの職人集団なので、過酷な条件でもしっかりミステリーハンターの声を収録してきます!

立っている事が困難な暴風での海辺のレポートなどを、しっかり収録していただいていました。

同業者の方たちなどに「どうやってとっているんだ!」と、よく質問されていました。

すばらしい仕事にこちらも感謝しかないです!だからよりよくしたい!とモチベーションも上がります

 

その職人集団が、うまく収録できない状態は、とんでもない環境なのだと認識して、こちらもより良くなるよう努力するしかないです。

(その時代、iZotopeさんは存在しません、、、あれば楽だったなー)

 

と、また昔話から始めてますが、

今回、どう話していくか悩んだのですが、少し技術的なことを話すことにしました!

私の手の内をすべてお見せします。

 

現場音の整音の流れとしては、

まず、LowCutなど必要のない、本来必要のないノイズをEQでカットします。

(今であれば、iZotope RXシリーズでノイズをカットします)

服の中などにピンマイクを仕込んでいる場合、高音域の不足があれば少し持ちあげるようにします。

ここですることは、本来の音質に戻すということです。

 

なぜかというと、その後、音量を均一にするためにコンプレッサー(音量の圧縮)をかけるのですが、必要のないノイズがあるとコンプレッサーがそのノイズにも反応するので、事前にそういうものを排除することが大事だと思います。

 

コンプレッサーの設定は、現在のProToolsの「Dyn3Compresor」でこんな感じです。

この設定からスタートします。

コンプレッサーは「Attack」と「Release」のタイムの最適値を見つける!ことが一番重要ではないでしょうか。

過剰な変化にならないように!あくまで自然な音量の平均化を目指します。

この時、VUメーターがあるとすごくその値を見つけやすいと思います。

(私は、映像に対する音声の音処理(MA)、音楽のミックス、どんな時でにもVUメーターを見ながら作業することをお勧めします。

今はプラグインでもありますので、是非活用してみてください)

目安として、VUメーターが大きくばたつかないタイムがありますので、そこを見つけること。

 

そして一般的に、コンプレッサーの使い方が難しいように言われますが「Attack」と「Release」のタイムの最適値を見つける事ができれば、音量処理は格段に楽になります。

過度に(一度に)効果を求めず、音が前に出てきたらOK、引っ込んでしまったら少し緩める、というようにかけすぎないように調整していきましょう。

現在のDAWであれば、いくつもコンプレッサーをかける事ができるので、もうちょっと!という時は、もう一段かけるという方がいいと思います。

 

その後、聞こえをよくするためにEQで基音の整え、倍音の強調をします。

たまに、声を強調したいがために、1Khz辺りを過度にブーストしているものを見かけますが、簡単な言い方をすれば、その処理は音量を上げていることとあまり変わらないと思います。

そこよりも、その上の成分(倍音)を持ち上げることによって、音量をあげる事なく明瞭にすることができるので、映像全体の音量を引き上げることができると思います。

 

その後、音質の処理が決まっても音量がばたつくようであれば、さらにコンプレッサーをかけたりします。(リミッターにする場合もあります、あまり私はしませんが)

 

と、基本的な設定が決まったら映像の頭から聴きながら、ProToolsでいえば「Clip Gain」と「ボリューム」を使ってレベルと音質を整えていきます。(コンプレッサーへのインプットボリュームと、アウトプットレベルの調整)

「Clip Gain」と「ボリューム」の使い分けは、とにかく過度な処理(コンプレッサーにさせない)をしないという事です。

「Clip Gain」をあげるということは、コンプレッサーの入力レベルを上げるということなので、上げすぎると下げられ過ぎますよ!ということに陥ります。

(ちょっと難しいですね)

いまのDAWはデジタルなので、もちろん忠実に処理してくれます。

コンプレッサーに入ってきた音のレベルが、スレッショルドより高ければさげます。

結果、音量感(音圧)が下がってしまいます。

しかし、大きく出したいから上げているのですが、「Clip Gain」であげると結果的に小さく聞こえてしまう事があります。

その時は、「ボリューム」で上げる方がいいと思います。(コンプレッサーのアウトプットレベルを上げるということです)

聞こえ方は「KNEE」の設定値でも変わってしまうので、この値も重要です。

(VUメーターを見ながら、それぞれの値を極端に変えてみるとその違いがわかると思います)

 

と、その時々で使い分け、現場の臨場感をお伝えできように粛々と整音していきます。

この現場音の整音が一番気を使い、時間がかかります。

 

やはりミキサーになりたい人向けオンリーな話しになってしましました、

次回はもっと面白い話ができればいいのですが、現状、ノーアイデアです、すみません。

 

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Mimm 森岡

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